原点へ・・・。・9
原点へ・・・。・9
どれ位、時間が経ったのだろう・・・
涙も枯れ果て、呆然としている私のもとに
いつも野菜を持ってきてくれたおばさまが
抱きつく
村人「雪乃ちゃん」
雪乃「おばさま」
村人「可哀想に・・・私が変わってあげられたら」
おばさまは、私の代わりに沢山の涙を流してくれていた。
そして、お師様・・・父の最後を教えてくれた・・・。
父は、社へ連れて行かれた私を救おうと、必死で抵抗
してくれたらしい・・・そして、他の村人を庇って
この世を去ったとのことだった・・・。
大内様達が到着する、ほんの少し前の出来事
雪乃「お師様・・・らしいね
最後に・・・おとうさんって・・・
呼びたかったな・・・」
枯れたはずの涙が、また溢れる
兵助「雪乃」
雪乃「・・・兵助」
兵助「」
兵助は、私の姿を見て、何があったのかを悟ったようだ
兵助「すまない
俺、お務めで僧正様と出かけていて」
雪乃「・・・大丈夫・・・いなくて良かったよ」
兵助「くっ」
僧正「お・お・・おお・・・雪乃・・・」
僧正様が、私を抱きしめる
僧正「なんという・・・なんということじゃ・・・」
雪乃「天岱様・・・お師様が・・・。」
僧正「ああ・・・わかっておる・・・儂が必ず
神の元へ送ってやるから心配するな・・・。」
雪乃「はい・・・」
この時代・・・私の知らないところで、こういったことが
普通に起こっていたのだろう・・・。
私は、この時代に何ができるのだろ・・・。
少しの時間の中で、世界が変わり続けていたはず
なのに、私は、そんな冷静な自分がいることに戸惑い、
蹂躙された村を眺めていた・・・。
大内「雪乃殿・・・こたびは・・・」
雪乃「大内様・・・ありがとうございました・・・
あなたが来てくれなければ、きっと、ここにいる
全ての人は・・・。」
大内「・・・・すまぬ」
大内様の声は優しく、私を気遣ってくれているのが
伝わってくる
雪乃「・・・大内様」
大内「何じゃ」
雪乃「男の方は、どうしてあんなことで、おなごを
制したと思うのでしょう」
大内「・・・・。」
雪乃「あんなことでは、人の心は変わらないのに・・・。」
大内「くっ・・・雪乃殿・・・すまぬ」
雪乃「ごめんなさい大内様に変なことを
本当に、沢山の人を救っていただき、感謝して
おります・・・。」
私は深々と頭を下げ、フラフラと父の亡骸の元へ・・・。
雪乃「おとうさま・・・。」
固くなった手を頬に当て、あの暖かかった手の温もりを
想い出す・・・。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
神主「こら~雪乃~ま~たイタズラしおって~」
「美味いか雪乃沢山食べろよ~」
「今日は寒いから、しっかり暖をとるのだぞ」
「よくできたな~えらいぞ~」
「ゆきの~」 「雪乃~」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「雪乃」「雪乃」
雪乃「はっおとうさま」
兵助「・・・いや・・・すまない」
雪乃「兵助 あれ私・・・眠って・・・。」
兵助「・・・すまないのだが・・・。」
雪乃「・・・そっか・・・お師様を送らないとね」
兵助「・・・ああ・・・」
人が人の命を奪う・・・。
そんな権利は誰にもない・・・しかし、この時代には
そういった事が、時間の流れとともに当たり前に
存在し、それを知るものと知らないものがいるのだと
気づくことになった・・・。
私は、大切な人との最後の別れを経験していた・・・。
続く・・・。
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