原点へ・・・。・24
原点へ・・・。・24
芦「雪さん世話になったな」
雪乃「なに言ってるの世話になったのは
私の方芦さん、本当にお達者で・・・。」
芦「雪さんのこれからの人生を期待しているよ
儂も生きていたら、1年半後にまた来よう」
雪乃「くすくすそれじゃぁ~、私も寿命の限り
生きて、また会えるように頑張るよ」
芦「ああ達者でな~」
いつもの調子で漂々と去ってゆく芦さんを見送り、
私は、百薬師の仕事に戻っていった
そして月日は流れ・・・私は山の中腹にある洞窟に
社を変えていた・・・。
この当時、世の中には恐ろしいほど感染力の強い
病が蔓延し、今までの社では被害が出る可能性が
あったのだ・・・。
雪乃「はぁはぁ・・・・くっ
(こんな病・・・初めてだ・・・。
これはただの病じゃない・・・病に呪のような
ものがかかっている・・・どちらもどうにか
しなければ、薬なんて作れない・・・。)」
嘔吐、下痢、熱、全身の痛み、皮膚のかゆみ、
身体中から出血するこの病は、今までに体験した
病とは根本から違っていた・・・。
雪乃「はぁはぁ・・・うっ」
意識が定まらない・・・。
そんな中、私はある言葉を思い出していた・・・。
雪乃「(そっか・・・あれから1年と半年・・・。
この病が、私の最後の戦になるのかも
しれない・・・だったら、絶対に勝たなくちゃ)」
命の灯火が再燃してゆく
小さな灯火は、消える前に大きな炎を纏い、
自分自身を誇示するように高く明るく燃え広がって行く
数日の苦しみの中で、今までに培ってきた知識、経験を
フルに活かして、病と戦い続ける
何度も行ってきたことだが、これが集大成だと思うと
自然と力が入っていった
そして・・・。
兵助「雪乃~」
雪乃「・・・あれっ・・・兵助・・・帰って・・・。」
兵助「ああ帰ってきたぞ」
雪乃「兵助・・・早く・・・血を・・・肉を・・・。」
兵助「し、しかし」
兵助の目には、ハッキリと写っていたのだろう。
今、血を抜き肉を奪えば、雪乃の身体は・・・。
雪乃「・・・大丈夫・・・今、取らなければ・・・
意味がなくなる・・・お願い・・・」
兵助「ううっ・・・で、できない」
雪乃「へい・・すけ・・・最後の・・・お願い・・・
聞いて・・・」
兵助「雪乃~俺には・・・俺は・・・。」
雪乃「・・・大丈夫・・・兵助なら・・・できるよ・・・。
へい・・すけ・・・なら・・・私は・・・
本望・・・だから・・・。」
兵助「雪乃・・・わかった
だから、逝くな頼むから・・・」
雪乃「わかった・・・頑張るよ・・・」
そう言うと、兵助は薬となるものを雪乃の身体から
採取して行く・・・。
採取されたものは、違う薬師が寺に運び薬を作り出す
兵助「・・・雪乃・・・。」
心配そうに覗き込む兵助に、力の無い笑顔を見せる・・・。
雪乃「・・・大丈夫・・・まだ、大丈夫だよ・・・。」
兵助が私の命を奪ったように思わせたくない一身で
命の灯火をつなぎとめる
兵助「・・・雪乃・・・すまない・・・」
雪乃「兵助・・・の・・・せいじゃ・・・ないよ・・・。
私の・・・命を・・・奪うのは・・・病でも・・・
兵助でも・・・ない・・・私・・・自身だから・・・。」
兵助「」
雪乃「・・・あれ」
兵助「ど、どうした」
雪乃「大きな・・・木・・・・そっか・・・。
これは・・・兵助の・・・これが・・・根源・・・
神・・様・・・ありが・・・とう・・・」
兵助「」
雪乃「・・・そろそろ・・・良いみたい・・・
わたし・・・おとう・・さん・・に・あえる・・・かな」
兵助「大丈夫きっと、会えるよ
神主様に・・・たくさん・・沢山・・・褒めて・・・
褒めて・・・もらうんだぞ」
雪乃「えへへっ・・・うれ・・し・・いな・・・。」
享年21歳・・・名を追うように、美しい真っ白な雪が
舞い散る中、雪乃は父の元へと旅立っていった
続く・・・。
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