原点へ・・・。・16

原点へ・・・。16

それから数日後

私の元へ、立派な興しに乗った、

依頼者が到着する・・・。

輿から降りたその女性は、私のいる社の前で

お付きの者と話しているようだった

女性「・・・何と穢らわしい場所よ

   本当に、わらわは此処に入らねばならぬのか

お侍「はいここにおります、薬師でなければ、

   祟りを祓うことができませぬゆえ・・・。」

女性「はぁ・・・・致し方あるまい・・・。」

お侍様に説き伏せられ、仕方ない様子

社の戸を開く・・・。

戸の外から現れたその女性は、綺羅びやかな

出で立ちをしており、ひと目見て、高貴な家系の方

だとわかる・・・。

女性「わらわの形代は、お主か

   ・・・何と醜い・・・。」

同じくらいの年齢の女性は、何か汚いモノをみるように

頭を下げている私を上から見下ろしていた

雪乃「ようこそいらっしゃいました・・・。

   この度、姫様の形代を務めさせていただきます、

   百薬師の雪乃にございます

姫様と呼ばれたことがお気に召したのか

少し機嫌をなおされたその女性は、病魔を克服した

ばかりの私に気遣う素振りを見せる

女性「雪乃とやら、此度はよろしくのぉ~

   上手く言った暁には、わらわから褒美をとらすぞ

   見たところ、年もわらわとそう変わらんようだ

   そうじゃ美しき着物をやろう

   少しは、見栄えも変わろう

はぁ~・・・一番いらないものかも・・・

そう心の中でつぶやきながらも、天岱様を思い

感謝の言葉をのべる・・・。

この後、私は女性を仏様の前に座らせ、女性を蝕む祟りを

その身に宿す祈祷を始めるが、女性は病魔で皮膚がタダレた

醜い私に触れられたくないようで、私もかなり気を使う

その上、病気がうつらないようにというお気持ちからか

距離をおく素振りも見せ、非常にやりにくい

そんな中、何とか祈祷を始める私は、女性の身体から

立ち上る祟りを見て驚愕する

雪乃「オン・・・バザラ・・・

   (なんて、禍々しいの・・・これは、私でも・・・。)」

周りの人には聞こえない声が、私の耳に木霊する・・・。

喰ろうてやろう・・・。

   「呪うてやろう・・・・。」

殺せ・・・殺せ・・・・。」

   「末代まで許さんぞ・・・。」

口にも耳にもしたくない沢山の声が、心を凍らせてゆく

この時の私は、身近に死を感じていた・・・。

          続く・・・。

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